[これは”8mm Film Resource Directory”の再掲載記事です]
モルトプレーンとは、カメラの内側に貼ってあるスポンジみたいなもので、遮光に使われています。モルトプレーンは経年劣化でべたべたになって、挙句の果てにはカサカサな粉上になって散らばります。カメラに使われているのに光学機器であるカメラの大敵のチリ、ごみの元です。中古カメラでは避けられないモルトプレーンのお掃除をやってみましょう。※モルトプレンは軟質ウレタンフォームの商品名です。
このエルモ8S-60は、 モルトプレーンが完全に崩壊して散乱してます。
おまけに、露出計用の水銀電池ボックスからイヤーなサビが・・・
あきらかに緑青以外の錆も出てきてます・・・ひょっとしてこれはあの体に悪い水銀がもれてるの?・・・?んんんん、どうしよう?????
まとめてお掃除すっか!
というわけで、モルトお掃除に加えてちょっと修理ネタです。
【準備 -おどうぐ-】
これがあたくしのおそうじセット・・・と言うのも恥ずかしい、いい加減なモンです。
左からイソプロピルアルコール(イソプロパノール)の99%。オーディオ用のクリーナーやエンジンの水抜き剤ですね。
エタノールも使いますが、樹脂に優しくないと聞いたので使い分けてます。大概の薬局では注文が必要かも知れません。ありふれたものなのですぐに取り寄せられます。500ccで480円ぐらい。エタノールの半額で済むのが一番のポイント。でも人間にはエタノールより厳しい。
ベンジンは、アルコールが効かないようなべったべたの粘着剤などのはがしに使ってます。今回は換気の悪い部屋でずっと使っていたのですっかり頭が痛くなりました。薬局で買えます。250円ぐらいでした。
紅いふたのガラス容器は、「ハンドラップ」というものです。中に入れた液体を一定量ずつ吐き出すための道具で、今回はじめて買ってみました。ものすごく便利です。
余談ですけど、 何年か前、ある映画1500カット全スプライス直しするはめになりまして、フィルムクリーナーのふたをあけてはふた締めて一こま洗浄、またふた空けて、、、を延々夜中に繰り返してたのですが、これがあったらあの作業は楽だったなあ・・・と遠い目を。1400円ぐらいです。
あとは爪楊枝、綿棒、ガムテープ。いずれも100円ショップ。綿棒は紙軸の方がいろいろ使えると思います。
ドライバーやカッターなどはよいものを買っておくといいです。特にドライバーはねじの頭なめちゃうと面倒なので。
【準備その2 -掃除機-】
そして、掃除機。ボンベタイプのエアブロアーも使いますが、ゴミがあらぬ所に入り込んでしまったことがあるので、内側のゴミ掃除には掃除機使ってます。静電気には注意、です。
パソコンショップのアクセサリー売り場で、こんなさきっぽに付けるアタッチメント売ってます。いろいろなすきまの掃除に活用してます。600円ぐらい。
【嗚呼水銀大爆発?】
というわけで、水銀電池ユニットのふたをはずすと案の定、 中に入ってた東芝製のH-Dが色とりどりにさびて爆発してます。
水銀イヤーん。
こんなもん手でさわれるか!と慎重にティッシュで取り外します。
ごしごしと緑青やらなにやら訳のわからない錆、そしてべたべたのモルトプレーンをさきほどのイソプロピルアルコールをしみこませた布やティッシュ、綿棒で拭き取ります。奥に入ってしまった奴は爪楊枝でほじりだします。
しかし水銀電池ボックスの緑青がどうしてもぬぐい切れません。
しょうがないので、はずれそうな駆動部ユニットをチェックすると・・・
やっぱりこれもはずれます。歯車ユニットまるまるすっぽりと取れます。
はずした状態。左からはずした順番です。内部にもモルトプレーンが大量に使われてます。
本体左側のフッテージカウンターの窓から全部光が入ってきてしまいます。
遮光のためにふんだんにモルトプレーンが必要だったのでしょう。
おまけに、モルトプレーンが貼ってあったところは全部さびて塗装面が ぶくぶくと浮き上がってしまってます。もう面倒なのでカッターで削り落とします。ええ、本体の錆削り落とすのです。
つや消し黒塗装してありましたがそんな塗料は用意してないので マジックで塗りたくります。金属地金よりはましでしょうから。
【断線してます】
で、歯車ユニットをはずすと水銀電池ボックスのねじがはずれるようになります。 これをはずしてリード線を見ると・・・
切れてます。断線してます。さっきまで露出計は動いていたのに?
キツネにつままれた気分ですが、この状態で駆動用単三電池を入れてシャッターを 半押しにすると、 露出計は明るさ暗さに反応してます。
・・・水銀電池はいったい何のために?・・・
(実はこれには理由がありますので別途ご案内を)
まったく訳がわからなくなってきたので、摘出した水銀電池ボックスを 掃除しまくりますが、取れない汚れは相変わらず鮮やかな緑色で こびりついてます。
どうやら、螺旋状の電池受け金具の根本が腐っているらしいので、 ええい、めんどうだとばかりに金具を引っこ抜きましたペンチで。
スッキリしたのはいいのですが、このままでは使えません。
ふと気が付いて100円ショップに向かいました。
懐中電灯とかの電池ボックスをばらして使おうと思ったのです。金具に似た材料があったのです。
結局、自転車用のライトユニットを買ってきて開封してイキナリ
ニッパーでバンバン切り出して電池ボックスにはめ込んで見ました。
あとは本体の端子にハンダ付けして一旦電池を入れてチェック。
もちろん動きます。ですが電池ボックスがない状態でも露出計の針は動いていたので よくわかりません。
まあ、いいとします。
あとでチェックしてみましょう。
もともと付いていたリード線を調べると、中の銅線が黒変してます。
作業中にオートで撮ってる写真なのでアンダーでわかりにくいですが、黒いビニール被服から、真っ黒になった銅線が出てきてます。この銅線、触ると粉になってはらはらと落下します。
これでは電気なんかまったく供給されていないでしょうね。あり合わせのリード線をお道具箱から見つけて半田付けです。
あとはもうひたすらこびりついたモルトとそれを貼っていた糊、 さびを削り、掃除機で吸い込んでは削り、吸い込んでの繰り返し。
きれいになったところで、モルトプレーンの貼り直し。
A4縦半分サイズ・3mm厚のものを使ってます。今まで10台以上貼ってますが5/6以上残ってます。たった860円が使い切れません。お得。
シングル8機でおなじみのこの手の丸穴には、細く切って詰め込んでます。細かい隙間には歯切れみたいなのをつっこんで、高さが足りないときはビッグマックよろしく三階建てぐらいにして。
逆に3mmでは厚すぎる所、たとえばフィルム室のふたと本体との隙間目張りなどは貼った後でカッターでこそぎ落としたりして調整してます。
見栄えはあまりよろしくないですが、しっかり遮光してくれれば全然問題なし。
気が付いたら午前中からはじめて夜の11時。
まるまる半日掛けてようやく完成致しました。なんと手際の悪いことだろう!
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