完パケがビデオメディアだったり、16mm以上のフィルムフォーマットにブローアップする予定ならば、特に「巻き戻し」撮影機能は必要ではないかもしれません。
しかし 8mmフィルムで作品を完成させる予定でしたら、巻き戻ししての撮影は必要になってくることがあります。
また、 多重露光は思いがけないイメージをもたらしてくれることがあります。
今回は、カメラの機能に頼らないでスーパー8カートリッジの巻き戻しができる機材のご紹介です。
スーパー8カメラの巻き戻し機能外観
スーパー8カメラに搭載されている巻き戻し機構は大きく分けて二つ。巻き取りスプールから巻き戻すか、巻き戻さないかのどちらかです。
巻き取りスプールから巻き戻さないタイプの巻き戻しは、有名なニコンR10やキヤノン1014エレクトロニクなど、いろんな機種に搭載されております。
これは、スーパー8カートリッジの中の空間をうまく利用したメカニズムです。具体的には撮影時にクローで掻き落としたフィルムを巻き取らないでおいて、カートリッジのすきまにたるませておくのです。こうすると本来逆転しない巻き取り軸を動かす必要は皆無です。あとはフィルムを逆送させればOK。
しかし、 カートリッジの隙間にも限界があるので、最大で100コマ程度しか巻き戻せないという制限が生まれます。
これらの機能はサイレントカートリッジでも可能です。
もう一つは、巻き取り軸を操作するタイプ。これはサウンドカートリッジが必要になります。サウンドカートリッジは逆転防止のストッパーが解除されるような構造になっていますが、これを利用した物です。また、 200ftカートリッジを利用した巻き戻しメカもありますが、これはもともと200ftカートリッジが全巻巻き戻し可能な構造のためです。
どちらにせよ、200ftカートリッジはおろか、50ftサウンドカートリッジもない現在は後者のテクニックはなにかしらの改造でもほどこさないと実現はかなり困難です。
スーパー8カートリッジ巻き戻し器 ewa-S8B
こと巻き戻しは、スーパー8カメラはオートマチックになっている機種がほとんどのために、自由に巻き戻しできるというふれこみのシングル8よりオーバーラップなどのテクニックはらくちんに出来ます。しかし、自動はいやじゃーという方や、もともと巻き戻し機能がないカメラユーザーの方のためにこんな器具が販売されておりました。
ドイツ製のスーパー8カートリッジ巻き戻し器、ewa-S8Bです。
これは以前、今はなき東京八重洲口のヒカリカメラがドイツから輸入販売していたもので50ftのサイレントスーパー8カートリッジ、サウンドカートリッジの両方を巻き戻すことができるという便利な機材です。
表側には、1から15まで刻まれた巻き戻しダイヤルと、サウンドカートリッジとサイレントカートリッジの切り替えレバー。
裏側には、巻き戻し量の目安表が載っています。
ためしにカートリッジをセットしてみるとこんな風になります。差し込み口から奥は、中にビロード状の布が貼り付けてあり、光が入らないようになっています。カートリッジ左側に見えるのは、カートリッジを向かって右側にぎゅーっと押しつけている板です。
先ほどの巻き戻しダイヤルの内側には、パーフォレーションに対応した歯車状になっていて、これがフィルムにかみ合って直接的にフィルムを上下させるという仕組みです。
さて巻き戻してみよう
さて、サイレントスーパー8カートリッジは構造上、巻き戻しができないと言われております。これは本当でしょうか?
確かにサイレントカートリッジは、その回転軸をさわってみてもわかるように、逆には回りません。これは、内部に「逆走行防止爪」があるからです。
しかし、それではこの実験は終わりです。意を決して思い切り逆回転させると、イヤな手応えとともに、軸が回り始めました。中の爪が曲がるか折れてしまったのですね。
この状態にしてから、巻き戻し機に掛けます。あとは任意の長さを目安表を見ながら巻き戻せばいいのです。
しかし、実際にやってみると巻き戻し途中でダイヤルが回らなくなるポイントがあります。巻き取り側のリールでフィルムがきつく巻かれている状態になってしまったのでしょう。こうなったら一旦ダイヤルをそのままに、全体をぽんぽんと手のひらなどで軽く叩きます。すると中のフィルムがほぐれ気味になってまた巻き戻すことができるようになりました。
何回か試すとそのたびに巻き戻せる状態が異なります。フィルムのほどけ具合によってはその頻度や回数も異なってきますので、よほど慎重に巻き戻しを行わないとあっという間にフィルムが動かなくなってパーフォレーションを破いてしまいます。
少しでも巻き取りダイヤルが重くなったら、ぽんぽんするかダイヤルを逆転の逆転(つまり正転側)に回せと説明書きにあったのをきちんと読んでおくべきでした。
というわけで、パーフォレーションを破いてしまったのです。
ちゃんと使えば便利な道具でしょうが、かなり危険が伴うのでこの手の機材が日本で製造販売されなかったのがよくわかります。
(2011年追記訂正)上記の使い方はまるで間違いです。
正しくは、オオノ隊員がコメントされてるように、巻き戻ししたいところでカートリッジに本巻き取り機に付属しているシールを貼り、巻き取り軸を動かないようにしてから撮影し、撮影が終わったら巻き戻し機に掛けて巻き戻すという仕掛けです。
つまり、通常の巻き取り機能付きスーパー8カメラが内部でやってること・・・撮影してクローでフィルムを送るけど、巻き取り軸に巻かずにカートリッジ内部でたるませておいて、巻き戻して後で正しく巻き取りながら撮影する・・・を、器具とシールで強制的に行うという仕掛けなのです。
当然、巻き戻し量は通常のスーパー8の巻き戻し量の限界・・・およそ100コマが限界でありましょう。これはスーパー8のカートリッジ内の空きスペースによる物なので上限があります。
その後、ドイツからいつも貴重な情報をくださっている方から、この手のグッズは何社からも出ていたと情報をいただきました。いずれにせよ、入手されることがありましたら使用には細心のご注意を。
(C)2006 Muddy Orihara All Rights Reserved.
(C)2011 Muddy Orihara All Rights Reserved.
資料協力:8mmFILM大百科 http://cine8mmfilm.tripod.co.jp/
コメント
これは昔よく使いました。
ただ,本当の使用方法は巻き戻し防止装置を無理矢理逆転させて壊すのではなく,巻き戻しを始めたい箇所で一旦フィルムを撮影機から抜き,巻き取り軸に専用の回転防止テープを貼るようになっていました。このテープを貼って,再び撮影機に装填し,撮影するのです。巻き取り軸が回転しないので,撮影フィルムはどんどんカートリッジの空白部分に押し込まれていきます。その後,フィルムを抜いてこの装置に装填するのです。フィルムはフリーな状態になっているので,するすると戻ります。大体250こま位は無理なく巻き戻せました。主に,スーパーインポーズを使ったタイトル撮影用に使いました。慣れてくると,1こまの違いもなく巻き戻せます。普通のシングル8よりはるかに正確に巻き戻せました。
ところで,巻き取り軸が回転しないと,フィルムトラブルかフィルム終了と認識して自動的に動作を停止する機構を内蔵した撮影機があります。(キヤノン814XL-S,1014XL-Sなど。)これらの機種では巻き取り軸をテープで止めておく方式は使えません。
この巻き戻し機なるものは今でもどこかで入手可能なのでしょうか?
CANONの1014XL-Sを使い始めたばかりなのですが、手で巻き戻す
のがうまくできず困っています。もし入手可能情報などご存知で
したら教えて下さい。
ebayとか見てると、時々出品されています。
また、同種の器具はたくさんあるそうです。
しかし、ワタシの使い方は根本的に間違ってるそうです。
「いっぺん進んでしまったフィルムをむりやり巻き戻す道具」ではなくて、
そもそも巻き取らないでおくためのテープと、あとで巻き戻すための機材です。
巻き戻し可能なスーパー8カメラがフィルムマガジン内部でやるようなことを、
これらのセットを使って行う、というものなのですね。
ですからもういっぺんこれつかって巻き戻すのは・・・どうやってもムリのようです。
そもそものお話ですが、巻き取り機能を持つ1014XL-Sでも巻き取れないのは、お手持ちの1014XL-Sの故障はないでしょうか?
さらに、この道具はオオノ隊員さんのコメントのように、1014XL-Sでは使えないそうです。
マディ折原さん、コメントありがとうございます。今でもあるんですね。
現在私が使用中の1014XL-Sで巻き取りはできてるでんすが、もっと延々と長いオーバーラップをやりたくて、こういう器具があればやりやすいのかなと思ったんです。なにかいい方法がないでしょうか?