2025年のぴあフィルムフェスティバルにおじゃま。と言っても、PFFアーカイブばっかり見てます。
これはまあつまり、80年代はワタシ小学生とか中学生とか高校生とかで…お金ないからんなしょっちゅう見に行けなかったということっす。なので当時見逃したやつを見ましょうということ。
PFFアーカイブのプログラム

※第47回ぴあフィルムフェスティバル2025フェスティバルカタログより
9月6日土曜日は早大シネマ研究会の『リトル・ウイング』と『どてらワルツ’81』の2本。
9月7日日曜日はお昼が北海道編。『爆 BACK』と『大麻じゃなくても良いけれど』の2本で、夕方が仙台編で『吊首姦太郎の青春』『にっぽにーず・がーる』の2本。
9月13日土曜日は究極のエンタテインメント自主映画出現と題した『いそげブライアン』と『肉体労働社が空を飛ぶ時、窓ぎわのコーちゃんに恐怖の暗躍団が迫る!!』の2本。
ハーバード大学の日本の自主映画アーカイブプログラム

※第47回ぴあフィルムフェスティバル2025フェスティバルカタログより
んで、ハーバード大学による日本の自主映画アーカイブプログラムのセレクションとして、
9月11日木曜日には『MOMENT』
9月13日土曜日夕方には『トワイライツ』『天地衰弱説第二章』『Improvisation』『Ephemera』TFOサイレント短編『man』の5本。
全部見ました。ところどころ仕事疲れでコックリコックリしちゃったところはありながらも全部見ました。
気になったこと フィルムゴミがすごいなあ
フィルムのゴミがすごいのよね…『リトル・ウイング』とか『どてらワルツ’81』とかは。
今回、デジタイズして保存するという大義があるようなのですが、ゴミ取りしなくていいのかなと思っちゃうわけです。
ワタシ、40年ぐらい前の8ミリ映画を大量にゴミ取り清掃したことあるのですが、こびりついちゃってるのよねゴミって。それも窓ゴミでよくある繊維みたいなのじゃなくて、雑誌の間にはさまってるクッキーのクズみたいな、ああいう感じの有機的なゴミっぽいのが。
フィルムクリーニング液をつけて、サーッとセーム革で拭く程度だと全然取れないの。結構しつこくやらないと取れない。乳剤面に傷をつけないようにそれでいてしつこくって…かなりの神経磨り減る作業でした。
つまりこれって、ゴミ付いたまま保存しちゃダメ、ってことなのよね。オリジナルは。
気になったこと 早稲田映研とシネマ研究会がごっちゃに取られかねない
PFFの荒木啓子さんが上映後のトークショーのMCをされていたのですが、初日の早大シネマ研究会のお話の時に…早稲田映画研究会と早大シネマ研究会を混同させるような表現をされていたように聞こえたのよね…。
むかしむかし早稲田では認められた部としての映画団体は2つで、稲門シナリオ研究会と早稲田映画研究会。
早大シネマ研究会はサークル扱いで、そもそも別の団体。在籍していた人も違うのよね。ってことは作家性とかも…と深く突っ込むかどうかはさておき、わざわざ伝説の早大シネマ研究会と団体名で区切ったプログラムなのに、くくった意味がぼんやりしちゃうなあと思って聞いてました。
気になったこと ぴあ、地域の情報誌、ミニコミの果たした役割
壇上に上がった作家さんたちが、自主映画仲間をどう見つけるのかという話で、学校の映画サークルや映画部などの既存グループに所属するとか、上映会などのイベントで知り合うなどに加えて、必ず上がるのは地方の情報誌やぴあの自主映画欄のこと。
自主映画のブームというのがあったとして、関東ならぴあ、関西ならプレイガイドジャーナルってものすごく影響あるのよね。
どうもこのあたり、謙遜されているのか自明なので省いたのか…作家が雑誌ぴあの果たした役割を高く評価しても、そこには触れずに流すのがどうもへんてこだよなあという気がしたのよね。
あと、もし自主映画の流行全体を語るのであれば、『月刊OUT』(みのり書房)とか『宇宙船』(朝日ソノラマ刊行時代)とかの媒体も大事なんだけどな…影響を受けた人の裾野が広いかもしれないし、ぴあとは違う層へのアピールがあったわけだし。
気になったこと 8ミリの現在の状況
これはfacebookですでに書いたことなんだけど、最終日の『いそげブライアン』の小松隆志監督が、かつてダブル8カメラで家族の行事の記録映画…ホームムービーですね…を父親に代わって撮っていたという昔話に続いて、「そういえば8ミリっていまどうなの?まだあるの?」というような質問をMCの方にしたところ、MCさんはぼんやりとしたお返事をされていたのね。あるともないとも言わないのよね。
文脈上、ダブル8のフィルムがまだ存続しているかはたまたシングル-8やスーパー8などのフィルムが現在も使える状態にあるのか的なふわっとした質問なんだろうけど、あるともないとも言わずにふわっと流した感じ。
かなり時間も押していたので、説明に時間がかかるから受け流したのかなあとも思うのですが、
「フィルムはコダックが販売してますよ」で済む話。10秒もかからない。モヤモヤするのよね。
気になったこと 16ミリプリントの話
最終日のハーバード大学のプロジェクトの上映後。『天地衰弱説第二章』およそ55年前の16ミリ映画ですけど、MCの方が「今回の上映はネガからではなくて…?」と質問したように聞こえたのね。えっネガから起こしてデジタイズしたら映写の傷やゴミや劣化はもっと少ないでしょと、どう見たってプリントじゃないかと思ってびっくりしたの。
一応その後監督が「リバーサルフィルム撮影ではなくて、ネガフィルム撮影を行っていました」と補足されたので、全体の意味としては「16ミリモノクロリバーサルフィルム撮影ではなくて、ネガフィルム撮影され、起こされたプリントが今回のハーバード大学のデジタイズに使われてる」
という、正しい情報が監督の補足で伝わってるので問題ないんですけどね。
『MOMENT』のデジタイズについて
ハーバード大学でのデジタイズはカラコレ、ゴミ取り、音の調整を施してあって非常に見やすい聞きやすい状態になっていました。

この映画、撮影の今関あきよしさんもおっしゃってましたが撮影の前半は三協XL-620なんですよね。ポッキーの部屋のシーンとか、レンズのにじみとか出ています。
んで、後半の公園のシーンはキヤノンですね。1014XL-Sのレンズの色のくせがモロに出ています。そーいうところがちゃんと分かるようになっています。
あと、一部色の印象が違うところもあるのでああ、カラコレしてるなあっていうイメージ。
この作品はもう何度も何度も見ていますので…
『肉体労働社が空を飛ぶ時、窓ぎわのコーちゃんに恐怖の暗躍団が迫る!!』はデュープ
かつて、PFFでは8ミリフィルム作品の保存のために、デュープを取っていたのものがあるのよね。
今と違って、8ミリはネガフィルムがずーっと無くてリバーサルばっかりだったので、撮影フィルムを現像してそのまま切り刻んで上映作品としてたわけで、プリントがないのよね。
コピーしたフィルムって当然、画質は劣化するわけです。アナログのコピーだから。
大体傾向はわかるので、ああこれデュープだなーと思ったのね見てるときに。
で、その説明は最後のトークショーでしっかりMCからあったの。上記のまんまだけど。
ただ、監督に「オリジナルはお持ちなのですか?」と聞いたら「何十年も見てませんがあります」とお答えされたと…
モヤモヤ…ってことは監督に確認しないでデジタイズが先に進んでたってことなのかな?
どこに重点をおいて作品の保存を行うか
ということで、『MOMENT』はデジタル・リマスターで作家の意図が反映されたもの、ということなのでしょう。ぴあのデジタイズのポリシーは明確ではありませんが、保存というところだけは間違いないでしょう。
作家への確認とかどうなってるのかな…
PFFとハーバード大学の取り組みの立脚点が違うのが、今回一番気になったことでした。
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