フラッグシップ機でそのメディア全体の特長を語るのは、ちょっと偏ったものになるかも知れません。しかし、シングル8フォーマットの可能性を引き出すという事に果敢にチャレンジしたカメラは、正直言って他にはありません。
実用的な中型機や、ハンディな小型機についてはまた別途語りますので、果たしてこの超重装備カメラが、映像制作にもたらす恩恵というのをどれだけスーパー8で補完できるかを考えてみようと思います。
ハイスピード撮影
72fpsのハイスピード撮影が可能、というのはシングル8のカートリッジの構造がシンプルなために実現できる、と言ったようなふれこみでした。
しかし、これは結果的にウソになってます。スーパー8機ではBeaulieu4008シリーズで80fpsを実現してますし、以前ご紹介した計測用のハイスピードカメラではスーパー8カートリッジを使いながらも300fpsまで可能です。
結論:ハイスピード撮影が必要ならば、スーパー8カメラで代用可能です。
巻き戻し
ZC-1000以外の富士写真フイルム製シングル8カメラは、お世辞にも使いやすい巻き戻し機構とは言えません。エルモ機やキヤノン機、そして最初期に作られたコニカ機の方が感覚的にとらえやすいです。ただ、フジカ製シングル-8機の巻き戻し機構はフィルムに傷を付ける心配が少ないのが特長です。壊れにくいのも良いです。
さて、ZC-1000のデジタルカウンタ付き電動巻き戻し機構に対応できるのは、スーパー8の機構上限界があります。
サウンドカートリッジや200ftカートリッジがあった頃には、NIZOのサウンド機やBeaulieuで可能だった巻き戻しテクニックもあるのですが、無い物ねだりをしてもしょうがありません。
スーパー8のサウンドカートリッジのパテントはコダックがオープンにしてないはずですので、デッドコピーを作るわけにもいきません。
結論:自由気ままな巻き戻しについては、ZC-1000に勝るものはない
バルブ撮影
世界中のスーパー8カメラを網羅しているわけではございませんので(結構がんばっているのですけど)これが唯一とは言いにくいのですが、バルブ撮影についてはZC-1000やZ800を上回るものがあります。
それは、ライキナスペシャル。別売りの撮影コントローラーを使うと、指定した通りのバルブ撮影が可能になります。ZC-1000とZ800のフルマニュアルコントロールより随分システムアップされた機構です。
また、コントロールは難しいのですが欧州のスーパー8機には、決められた露光量になるまでシャッターを開け続けると言う機能を持ったものがあります。NIZOの481や561、801など。微妙に機能が違いますが、オイミッヒにもバウアーにも似たようなものがあります。
結論:
スーパー8でバルブ撮影はわりと容易。NIZOなどに搭載されている機能はシングル-8カメラには皆無。いろいろ撮って工夫していく楽しみがシングル-8全般にあまり提供されていなかったのは残念な話です。
レンズ交換
超望遠映像撮影などで活躍するレンズ交換機能。
ZC-1000のレンズ交換では、純正の5.5mm広角レンズと7.5-75mm10倍ズームレンズの取り替えが一番多い機会でしょう。Cマウントレンズで8mm用に使えるのは意外に少ないですし。
Cマウントでレンズ交換出来るスーパー8カメラは、Beaulieuの一連のシリーズ以外となると・・・無いに等しいです。
ですから、ZC-1000かBeaulieuか、となります。
しかしZC-1000のレンズは、あんまり汎用性がありません。他機種に付けようとするとぶつかってしまったりします。逆は可能だったりしますが。そして、Beaulieuは2***、4***、5***シリーズごとにほぼ専用レンズになっています。
結論:レンズの後ろの径の大きさでZC-1000純正レンズにやや問題があるが、Beaulieu純正もほぼ専用レンズとなってる点を考えればどっちもどっちかなと。
当方の結論として、ZC-1000の持つ機能それぞれを凌駕するものを持っているカメラもあるが、全部の機能を兼ね備えているカメラがないので、何台か必要になる、と言うところでしょうか。
本ブログに珍しく、あえて乱暴なまとめ方をしてみました。
ツッコミ大歓迎です。
※2022年改訂
コメント
シングル8ZC1000は最高!・・・・なのは間違いないんです。16ミリ撮影機にも匹敵するものがないと言って良いくらいです。Cマウント,ミラーシャッターでしかもシャッター開角度可変。72こま撮影可能というのは,16ミリにもありません。ボレックスH16はシャッター開角度可変でCマウントですが,ハーフミラープリズム式で,最高こまは64こま毎秒です。ボリューR16はCマウントミラーシャッターですが,シャッター開角度は可変出来ず,また最高こまは64こま毎秒です。ボリュー2016は80こま毎秒での撮影が可能となりましたが,シャッター開角度はやはり固定です。パテーBTLシリーズはCマウント,ペリクルミラー式一眼レフ,シャッター開角度可変,80こま撮影可能と,ZC1000なみのスペックですが,実は巻き戻し量に制限があり,この点でZC1000に劣っています。
ということで,16ミリ撮影機上回る能力を持った最高の8ミリシネカメラだということが言えると思います。問題は使用フィルムです。R25Nの性能はまずまずと言えますが,RT200Nの性能が悪く,きれいな電灯光撮影が出来ません。アニメや特撮には電灯光撮影が必要で,これが致命的な欠陥だと言えるでしょう。私は,家庭記録が主ですが,特撮なんかも色々やったことがあります。特撮映画などを見ても,合成場面は 2?3秒のことが多く,長尺の巻き戻しがそんなに必要だとも思えませんでした。自由な巻き戻し量より,短くとも正確な巻き戻し量,電灯光できれいに撮影できるというメリットの方が遙かに大きく思ったのでスーパー8の方を選択したのです。
スクリーンプロセスなどもやったことがありますが,これは電灯光できれいに撮影できるスーパー8だからこそ出来た表現で,シングル8では無理だったろうと思っています。
ZC1000は、機能面において使いやすさにおいて最高級のカメラだと思います。マディさんも書かれているように、スーパーでこれに対抗できるのは、ボリューの4008かそれ以上だけでしょう。しかし、持つ人こそ多かれ使用する人は少ないというご指摘をマディさんから頂き、私もその一人です。VIS A VIAの店長によれば、ZC1000にアンジェニューのレンズをつければ見違えるように美しいとのこと。4008は可変速撮影も可能で、ASAもフイルムによって微妙な変化がつけられる。ところが、使いにくい。使い込んでも解らないことが沢山出てくる。4008を自在に使いこなせる方、お礼に焼き肉を鱈腹ごちそうしますので、是非ご指導下さい。
ZC1000はいいんですけれど,シングル8の場合,ZC1000以外は使い物にならない・・・
といった状態だったのです。特にサウンドカメラが発売されてからは,シングル8は単純な機械だけになってしまい,こま撮りしたい,あるいは単に手動絞りをしたいというだけで,ZC1000を使わなければならないという具合になってしまったんです。ZC1000の機能をすべて使いつくす,ということはなかなかなかったのではと思うのですが,それでは私の愛機,スーパー8撮影機のニコンR8でどこまでZC1000に迫れるかを検証したいと思います。
ズーム倍率はニコンR8が8倍,ZC1000が10倍です。当然,10倍ズームの方が効果的であるといえますが,そんなに単純に割り切れるものではありません。例えば広角側はニコンR8もZC1000も同じ7.5mmです。したがって,7.5mmの広角側を生かしたいと言うことであれば,両者は同じ効果です。勿論,ZC1000には5.5mmの交換レンズがありますが,標準レンズでの場合です。しかもニコンR8は高速低速の2段階切り替え電動ズームがついており,また手動ズームが実に軽やかに動きます。(ガチョーン効果が出せる)それに対してZC1000の方は手動ズームのみ,ズーミングが重いので高速ズーミング効果は無理です。(したがってガチョーン効果も無理)また,ニコンR8は実にピント合わせがしやすいスプリットイメージを備え,被写界深度が極端に浅い,絞り開放,近距離といった悪条件でも比較的ピントを外すことが少なく,また移動する被写体に対してピント送りも可能です。ZC1000でそのようなことが出来ないとはいいませんが,かなり難しいでしょう。
またニコンR8はフィルター径が52mm,ZC1000は62mm。色々フィルターを使い分けたり,特殊効果用のフィルター(ミラージュなど)を使用する場合,この52mmというフィルター径は実に有利なのです。しかも,ニコンR8にはタイトル撮影用に適したクロースアップレンズ(最広角にセットした状態でほぼB5サイズが撮影可能)と超接写に適したクロースアップレンズ(ほぼ等倍まで撮影可能)の2種が準備されていました。しかも前者のクロースアップレンズはマルチコートアクロマートという超高級なもので,拡大映写が必要な8ミリ映画のクオリティを低下させないよう充分に考慮されたものでした。また,スライドを簡単に複写できる装置も2種類用意されていました。ひとつはレンズをマクロモードにして使用するもの,もうひとつはクロースアップレンズを併用して,スライドをトリミングできるようにしたものです。また,顕微鏡撮影用のアダプターも用意されていました。
これに対して,ZC1000には標準的なクロースアップレンズが用意されているだけ。
確かにCマウントの交換レンズが自由に使えるから・・・といってしまえばそれまでですが,現実問題としてはどちらの方が実用的であったかというと,ニコンR8の方に軍配を上げたくなります。
ニコンR8のこま速度は,18,24,54,ZC1000は12,18,24,36,72と遙かに優れていますが,まあ,一般的には54こま撮影が出来ればそこそこのスローモーション効果は期待できます。
他にニコンR8は自動オーバーラップ,多重撮影,逆転撮影が可能です。勿論これらはZC1000の方が完璧に出来るわけですが,オーバーラップに限って言えば,全自動のニコンR8の方が成功率が高いと思います。ニコンのこの巻き戻し機構は結構重宝したもので,ZC1000以外のどのフジカシングル8よりきちんと利用できます。
テープレコーダーの同時スタートが出来る点はニコンR8もZC1000も同じですが,ニコンR8はストロボ端子を標準で備えており,これはパルスシンクロに使用することができ,重宝しました。ZC1000もパルスシンクロできますが,装備が仰々しくなってしまいます。
全巻巻き戻ししたい!72こま撮影したい!5.5mmで撮影したい!超望遠撮影をしたい!長時間露光がしたい!というのなら別ですが,ZC1000を使用していた人はこれらの機能がすべて必要で購入していたのでしょうか?
ニコンR8は価格はZC1000の約半分,質量も1kg近く軽く,テクニックも8割はオーケー。しかし撮影された映像の美しさはZC1000を遙かにしのぐ・・・ということで,かなり満足度の高い機械です。
下のページにある「怪獣迷子」という作品は、全編ZC-1000で撮られたとのこと。
特撮には興味ないけど、普通に楽しめました。最後は泣ける。(T_T)
http://www.con-can.com/PreviewRoom/jp/sakuhin.html?movie_id=200615262