「実験映画を観る会Vol.4 川口肇・芹沢洋一郎」におじゃましました

イベント

勤め人は年度末から新年度はタスク多くて。先週末にとにかくタスクのピーク無理やり片付けて…しばらくぶりの実験映画を観る会に駆けつけたわけです。

実験映画を観る会は、フィルムで制作された実験映画をフィルムで上映することをコンセプトに、これまで3回行ってきた。第4回目は、フィルムとデジタルを縦横に行き来する作品を制作する川口肇、芹沢洋一郎映画の上映。フィルム作品はもちろんフィルムで、デジタル作品やフィルムとのミックス作品はそれぞれオリジナルのメディアで上映し、改めて映画にとってフィルムとは何かを考える。

パンフレットより引用

アタクシのこのブログは、おもしろい映像を作るには8mmでも16mmでもビデオカメラでもコンピュータでもVRでもスマートフォンでもドローンでも何でも使いましょう!と提案するサイトですので、メディアと作品との関係を意識したイベントはとても気になるのです。

植え込みの紅い花の向こうに、蒼いテープで貼られた白いチラシ。ここが上映会場です。

今回は川口肇、芹沢洋一郎。かねてよりおつきあいさせていただいているお二方ですが、作品に向き合うとなると、キリッとします。

手前にはビデオプロジェクター、太田曜さんのうしろにエルモの16ミリ映写機。

川口肇作品

まずは、川口肇さんの作品群の上映からです。

1.粒子/ノイズ

Air(8mmフィルム/06min /1992)※サイレント作品
Corridor (ビデオ/11min/1994)

2.透過/積層

消失点(デジタルビデオ/07min/2009)
vanishing-eight(8mmフィルム/03min/2009)

3.ぶれ、滲み

掌のオーロラ(8mmフィルム+デジタルビデオ ミックス上映/15min/2010)
帰途・セラフの森(デジタルビデオ/11min/2010)
Sumie(16mmフィルム/05min/2018)

4.D/Fの混交

rack-pinion(wired-glass No.4)(16mmフィルム/05min/2017)
MIRROR/RORRIM(16mmフィルム+デジタルビデオ ミックス上映/06min/2019)
miniature(8mmフィルム/06min/2019)※サイレント作品


フィルム5作品25分 デジタルビデオ3作品29分 ミックス上映作品2作品21分(合計10作品 75分)

お色直しタイム

川口肇さんの上映後、芹沢さんの上映前に会場内での準備があるそうで一旦お客さん全員外に出ました。すごく下手くそなウグイスが一所懸命に鳴いてます。

芹沢洋一郎作品

芹沢さんのお写真撮り逃しました…なので芹沢さんのご厚意で「フランケンプリンター」のお写真を。

昼間行雄さんの協力で作り上げたオプチカルプリンター「フランケンプリンター」。「殺人キャメラ」の制作に使用されたもの。

1.フィルムは露光する!

1.走れウサギ(8mm/03min/1991)

2.フィルムは焼ける!塗れる!

  1. 間男(8mm/06min/1989)
  2. 煮奴(デジタル/01min/2021)

3.フィルムは音を出す!

4.いどうだいすき(8mm/25min/1991)

4.フィルムは重ねられる!

5.殺人キャメラ(16mm/03min/1996)

5.フィルムはデジタル化できるか?

  1. サヴァイヴァル5+3(8mm/08min/2016)
  2. サヴァイヴァル5+3【デジタル捕獲版】」(デジタル/09min/2017)

6.フィルムは光を透過する!

8.DIRECT LIGHT(16mm/16min/1995)

鑑賞し終えて

ワタシは非常に疲れておりまして…川口さんの作品の冒頭から船を漕いでしまっておりました。

「Air」は同ポジでどんどんと曖昧になっていく映像が魅力。粒子としてくくられていますが、まるで被写体の女性が「空気」となって空間と溶け込んでしまうような気持ちよさを感じます。

「Corridor」はアナログのビデオテープを繰り返しダビングすることでノイズに埋もれていく映像を表現したもの。

どちらも複写・転写・コピーによるデータの変化を捉えたものですが、並べてみるとメディアの特質がくっきりしますね。

「消失点」と聞くと、ニューシネマの『バニシング・ポイント』(1971年)がまっさきに思い出されちゃうワタシなのですが、同作とは真逆で毎日繰り返される「通勤」の風景が制作の鍵ですよねこれ。

近いテーマを8ミリによる多重露光でこしらえた「vanishing-eight」と並べるとこれまたメディアの違い…合成とか多重露光による手触りの違いが明らかになります。

バルブ撮影・スローシャッター撮影・長時間露光撮影…ほぼ同義ですが、それらのテクニックを使った作品3本。デジタル撮影の「帰途・セラフの森」のバルブ撮影は意外にフィルムの手触りとそれほどの違いを感じなかったのはなぜかしら…

”8ミリで長時間露光クランク”とパンフレットに書いてあるので、「掌のオーロラ」で使用されたのはフジカシングル-8 Z800かZC1000だろうなあと思います。

会場でスーパー8でバルブ撮影できるカメラは?と質問されてる女性がいたので、参考までに以前に書いた記事を挙げておきます。

「sumie」はモノクロが気持ちいい作品でした。

「MIRROR/RORRIM」は今回一番ビックリした作品。ビデオ映像とフィルム映像が融合した作品なのですが入れ代わり立ち代わり現れる映像に、あれどっちがビデオでどっちがフィルム…と混乱します。そのうちになるほど、これはそういう試みなのだなとハッと気が付きます。

芹沢洋一郎さんの走れウサギは初めて拝見しましたが…1991年の風が吹いてますね…同じ空気の中で8ミリカメラ回してましたとノスタルジックに後ろを振り向きましたん。

「間男」…映像って連続した動きを8ミリなら1/18にサンプリングして映写する…デジタルじゃんか…とイイつつも実際は「ぶれているコマ」がないとカクカクとした映像になります(人形アニメーションの動きを想起してくださいまし)。コマ単位で見るとアナログですよね…という仕組みになってるわけですが、この「ぶれているコマ」を楽しく実感できるようにこしらえたのが「間男」なんだろうと思うわけです。
 ユーモアあふれる作品でしたが、コマの再撮影のために一旦35ミリのリバーサルフィルムで再撮影をするというこだわりようです。(※紙焼きの再撮影だと解像度も階調もガクッと落ちるのよね…)

「煮奴」これはまさにコロナ旋風吹き荒れる最中に作られた作品。窓ガラスを拭く動作がコロナを拭い去るアナロジーになっているのがスッと伝わる、肩の力の抜けた語り口の旨さ、そしてなにより被写体である作家の母上の日常感が細かい動きにしっかり捉えられているからでしょう。実験映画と銘打つ作品でほっこりした気分になるのはホント珍しいなあという作品です。

「いどうだいすき」以前見たときは激しく動き回る映像にすっかり車酔いを起こして最後まで観られなかったですがこの日は無事完走。当時はまだバリバリに刊行されていた『月刊イメージフォーラム』での紹介依頼、32年めにしてようやく完走しました。1991年の空気感、ビンビンです。自転車の走行音と同時録音8ミリカメラのカタカタという走行ノイズが混じり、なにか映像が鼓動を打ってるような感じです。

そして初見の「殺人キャメラ」は上の「フランケンプリンター」で作られた作品。

そしてこのお写真は当時の芹沢さんと、フランケンプリンターの設計者である昼間行雄さん。(写真提供:芹沢洋一郎)

「合成人間」(1993年)で、多重露光によるほんわかとした二重映像ではなくて輪郭線がぱっきりとした合成映像をめざしたと当時語っていたのに非常に感じるところがありました。

氏が掲げる主題と手法の一致という命題に関係あるかな…かどうかわかりませんが…昭和生まれのオスガキは浴びるほど体験してきた「特撮」映像って手法がジャンル名ですよねえ。

トークショー

上映後はトークショー。横江れいなさんが加わりMCでトークを回すよ…割とすぐにその形は崩れて鼎談っぽくなってましたが…。

川口肇さんの「MIRROR/RORRIM」と、芹沢洋一郎さんの「サヴァイヴァル5+3」「煮奴」について話題が膨らんでおりましたん。

打ち上げにて

なんかしばらくぶりに打ち上げと呼ばれるものに参加しました。コロナで引きこもっていたなあという感じ。

しばらく観ないうちに、左手の黒いシャツの南さんも随分とスッキリと男っぷりが上がりましたし、右側の手しか見えてない人とお箸もってる「グラウンド・レベル・シネマ」のお二人(お名前失念しましたごめんなさい)も熱っぽく語ります。

画面奥で中立ちになってるのは中国からの留学生チームかしら。映画に限らず写真でもフィルムネタに中国の方がご興味持たれてるようですねえ。ちょこちょこお目にかかります。

今度はグラウンド・レベルにも足を運んでみようと思い、帰途に付きましたん。

フランケンプリンター写真提供:芹沢洋一郎

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